V(BTS)評伝のカバーグラフィック

BTS V 評伝 — 自らつくる人

BTS
ホワイトハウスのブリーフィングルームにいるBTSのV
2022年5月31日、ホワイトハウスのブリーフィングルームで行われたBTSの会見中のV
写真: The White House (Cameron Smith) · パブリックドメイン · Wikimedia Commons

この記事に登場する場所

ソウル 1 ロサンゼルス 7

拡大:韓国

居昌(コチャン) 1 大邱(テグ) 1 ソウル 1

居昌(コチャン) — 慶尚南道の内陸、智異山と徳裕山の間にある郡。

居昌(コチャン)からソウルまで直線距離で約220km

数字はその場所が登場する章の番号です。

BTS V 評伝 — 自らつくる人 グループの低い声から、曲を書き映像を演出するアーティストへ。BTSのVの歩みの記録。 Topics: BTS, .

プロフィール

項目 内容
活動名 V
本名 キム・テヒョン(金泰亨)
生年月日 1995年12月30日、大邱
所属 BTS、BIGHIT MUSIC
デビュー 2013年6月13日
主な活動分野 歌手、作曲家、俳優

要約

VはBTSのメンバーで、低く深い中低音の歌声でグループのサウンドに独特の質感を与えてきた歌手だ。しかしその歩みをたどると、歌うだけにとどまらず、曲を作り、ミュージックビデオを演出し、ジャケット写真まで自ら撮る「自らつくる人」へと変わってきた過程が見えてくる。韓国・居昌で育った少年は、デビュー10年目に発表した初のソロアルバム『Layover』で米ビルボード200の2位に輝き、除隊後に発表されたBTSの5枚目のフルアルバムには自ら作詞・作曲した曲を収録した。その曲は2026年のG7サミットで韓国を紹介する音楽として使われた。

第1章 居昌の少年

Vは1995年12月30日に大邱で生まれ、慶尚南道居昌郡で育った。[1] 智異山と徳裕山の間にある小さな町は、華やかな芸能界とは縁遠い場所だった。

彼は小学生のころから歌手になる夢を抱いていた。その夢への最初の道具は歌ではなく楽器だった。音楽をやるためにサックスを習い、ステージに必要なダンスを身につけようとダンス教室にも通った。[1] のちに彼の音楽ににじむジャズの色彩は、このころ楽器を手にした経験と重なって見えることもある。彼は今も、フィルムカメラやトランペット、絵画など、音楽以外の芸術にも幅広く関心を持っていると語っている。[10]

チャンスは思いがけず訪れた。友人について大邱で開かれたBig Hit Entertainmentのオーディションに行き、そこで目に留まって練習生になったのだ。[1][2] 自ら舞台に立つつもりで行ったわけではなかったという点で、彼の出発は偶然に近かった。彼は居昌を離れ、ソウルで練習生生活を始めた。

練習生時代の彼は、ファンに知られていないメンバーだった。ほかの練習生たちが動画やブログで一人ずつ顔を知られていく一方で、彼は約2年間、公開されないまま練習を続け、デビュー直前になってようやく最終メンバーとして公開された。[2] 舞台裏で静かにデビューを待ったこの時間は、のちに彼が一人で曲と向き合い、長い時間をかけて磨き上げる制作スタイルとも重なって見える。

第2章 デビュー、グループの低い声(2013〜2015)

2013年6月13日、BTSはデビューシングルアルバム『2 Cool 4 Skool』の「No More Dream」で初舞台を踏んだ。最後まで公開されていなかったVが、初めて人前に姿を現した瞬間でもあった。

デビュー当初のBTSの音楽は、強いヒップホップが中心だった。その中でVの役割ははっきりしていた。サブボーカルとして、ラップと高音域のボーカルの間で、中低音で曲の土台を支える役割だ。[2] 彼の声は華やかに駆け上がるよりも、曲全体の重心を取る方に近く、その音色はBTSのサウンドに深みを与える要素と言えるだろう。

この時期、Vは地上波の音楽番組でスペシャルMCも何度か務めた。舞台の上で表情と雰囲気を一瞬で変えるその表現力は、のちの演技やミュージックビデオ演出につながる土台になったと言えるだろう。

グループの中で彼が何に力を得ているのかは、のちのインタビューで明らかになる。彼は外部よりもグループの内側から刺激を受けるタイプだとし、メンバーが努力する姿を見ると自分も追いつかなければと思うと語った。そしてメンバーを「自分という人間を動かしてくれる人たち」と表現した。[10]

第3章 初のソロ曲と初の演技(2016)

2016年は、Vにとって「初めて」が重なった年だ。

一つ目は演技だった。彼はKBS2のドラマ『花郎(ファラン)』でハンソン役を演じ、本名のキム・テヒョンとして出演した。[3] 新羅時代の若き花郎たちの物語の中で、彼は純粋で明るい末っ子の花郎を演じた。制作陣は現場での彼の人懐っこさを高く評価した。[1] 同じグループのJINと一緒に歌ったこのドラマのOSTは、彼にとって初のドラマ音楽への参加でもあった。

二つ目はソロ曲だった。BTSの2枚目のフルアルバム『WINGS』にはメンバーそれぞれのソロ曲が収録され、Vの曲は「Stigma」だった。彼はこの曲の作詞と作曲の両方に参加した。[4] ジャズとネオソウルの香りが漂うこの曲で、彼は中低音だけでなく高いファルセットまで行き来する声域を、初めて一人で聞かせた。歌う人だった彼が、曲を作る仕事に足を踏み入れた最初の一歩だった。

同じ年、ファンクラブ3期のファンミーティングで、彼は「ボラヘ」(I Purple You)という言葉を初めて口にした。[5] 虹の七色の最後の色が紫だから、紫のように互いを信じ、長く愛し合おうという意味だった。[5] 「愛してる」に信頼の意味を加えたこの言葉は、のちにBTSとファンダムARMYをつなぐ象徴となり、BTSが公演する場所ごとに紫が彼らの象徴色として使われるようになった。[5] 彼が作ったのは曲だけではなかったのだ。

第4章 自らつくり始める(2017〜2020)

2017年から2020年までは、Vが「自らつくる人」へとはっきり姿を変えた時期だ。

最初の兆しは、2017年にRMと一緒に作った「4 O’CLOCK」だった。[2] 明け方4時の情緒を描いたこの曲は、彼が仲間と一緒に一から作り上げて公開した作品だった。

「Singularity」、海外の評論家が注目した声。 2018年、BTSの3枚目のフルアルバム『LOVE YOURSELF 轉 ‘Tear’』のトレーラーとして公開されたソロ曲「Singularity」は、ネオソウルの曲だ。この曲はイギリスのBBCラジオでK-POPアイドルのソロ曲として初めて放送され、英ガーディアン紙が選ぶ月間ベスト50曲にも入った。[1] ダンスとパフォーマンスが中心のアイドルグループのソロ曲が、声だけで韓国の外の音楽評論家の注目を集めたのだ。同じ年10月、彼はBTSのメンバーとともに、韓国文化とハングルを世界に広めた功績で花冠文化勲章を受章した。文化勲章の史上最年少受章だった。[28][29]

「風景」、一人で作った最初の歌。 2019年1月30日、VはBTSのSoundCloudアカウントで自作曲「風景(Scenery)」を無料公開した。[6] アルバムに収録される正式な音源ではなく、ファンへの贈り物のような曲だったが、静かなピアノバラードに込められた彼の感性は多くの人の耳をとらえた。この曲は公開から半月あまりでSoundCloudの再生回数1億回を突破し、同年2月には、正式音源ではないSoundCloudの曲として初めて韓国のラジオで放送された。[6] ラジオのパーソナリティは、その歌詞を一編の詩のようだと評した。[6]

「Winter Bear」、歌から映像と写真へ。 同じ年8月に公開された初の英語の自作曲「Winter Bear」で、Vの「ものづくり」は歌を超えた。[7] 彼はこの曲のミュージックビデオを自ら演出して出演し、ジャケット写真も自ら撮影した。[2][7][8] 写真を撮るとき、彼は「Vante」という名前を使った。曲を書き、歌い、映像を演出し、写真を撮る。そのすべてを一人でこなしたこの作品で、彼はプロデューサーとしての顔まで見せた。[2]

「Sweet Night」、ドラマのために書いた歌。 2020年3月13日、JTBCのドラマ『梨泰院クラス』のOST「Sweet Night」が公開された。Vはこの曲を自ら書き、プロデュースした。[9] アコースティックギターが導くインディーポップのこの曲は、主人公の心情を描きながら、Vならではの温かい歌声をそのまま伝えた。他人が作った曲を歌うのが一般的なドラマOSTで、歌手自らが曲を作って参加したのだ。

同じ年、BTSの4枚目のフルアルバム『MAP OF THE SOUL : 7』には彼のソロ曲「Inner Child」が収録された。軽快なブリットポップのリズムに乗せて幼いころの自分に語りかけるこの曲は、中低音の歌手だった彼がジャンルの幅をどれほど広げたかを示した。

では、彼はどのように曲を作るのだろうか。2021年のインタビューで彼は、1曲作るのに最低3か月はかかると語った。[10] 思いついたことは日記に書き留めるが、作った曲も時間がたって聞き直して物足りなければ丸ごと消してしまうという。[10] 彼が望むのは、ファンにも知人にも、誰に聞かせても胸を張れる曲を書くことだった。[10] 彼が発表した自作曲が多くない理由も、この基準から推し量ることができる。

第5章 ソロアーティストとして(2021〜2023)

「Christmas Tree」、初のビルボードHot 100。 2021年12月24日、ドラマ『その年、私たちは』のOST「Christmas Tree」が公開された。この曲は米ビルボードHot 100にランクインし、Vにとって初のソロでのHot 100入り、そして韓国ドラマOSTとして初のHot 100入りとなった。[11][12] さらにビルボードのデジタル・ソング・セールス・チャートで1位を獲得した。[13]

同じ年、彼は自分の声を超えるための練習にも打ち込んだ。BTSの「Butter」のレコーディングで高音域を思うように歌いこなせず、自分に腹が立って練習を重ねたという。[10] 中低音が強みの歌手が、その強みだけにとどまろうとしなかったことを示すエピソードだ。

この時期、Vは音楽以外にも活動の幅を広げた。2022年にはDisney+のバラエティ『In the SOOP:フレンドケーション』、2023年にはtvNのバラエティ『ソジンの家』に出演し、海外ファッションブランドのアンバサダーとしても活動した。

『Layover』、初のソロアルバム。 2023年9月8日、Vはデビュー10年目にして初のソロアルバム『Layover』を発表した。アルバム制作はADORのミン・ヒジン代表が総括プロデューサーとして、音楽、振付け、デザイン、プロモーション全般を率いた。[14] ミン代表は、最初に提案を受けたときはスケジュールの都合で迷ったが、Vの姿勢と情熱、そして歌声に惹かれて引き受けたと明かした。[16]

「Layover」とは、旅の途中でしばし立ち寄る乗り継ぎ地のことだ。Vはこのアルバムが、今の自分が正しい方向に進んでいるかを振り返り、最終目的地をあらためて確かめる時間になるよう願った。[15] アルバムの準備では発声練習から一からやり直し、その過程で自分自身について多くのことに気づいたと語った。[15] アルバムはタイトル曲「Slow Dancing」をはじめ、ポップR&Bを基調とした6曲で構成され、[14] 華やかなパフォーマンスよりも歌声の質感に焦点を当てた。彼はこのアルバムを「人間キム・テヒョンの魅力がそのまま詰まったアルバム」と紹介した。[14]

成績は、彼がもはや「グループのメンバー」だけではないことを示した。『Layover』は米ビルボード200に2位で初登場し[17]、ハンテオチャートでは初週販売量でK-POPソロアーティスト史上最高記録を打ち立てた。[18]

第6章 兵役(2023〜2025)

初のソロアルバムからわずか3か月後の2023年12月11日、Vは論山の陸軍訓練所に入隊した。[19] 彼は体力評価や書類、面接など厳しい選抜を経なければならない陸軍の軍事警察特殊任務隊(SDT)に志願して服務した。[19][20]

服務期間中も、彼の名前が刻まれた作品は続いた。2024年1月にはIUの「Love wins all」のミュージックビデオが公開され、彼は『花郎』以来久しぶりに演技で画面に登場した。[30][31] 入隊前に準備しておいたデジタルシングル「FRI(END)S」が2024年に発表され、同じ年にはパク・ヒョシンと歌った「Winter Ahead」も公開された。

2025年6月10日、Vは同じグループのRMとともに春川で除隊した。[21][22]

第7章 現在

除隊から2か月後の2025年8月、彼はアメリカ・ロサンゼルスのドジャースタジアムで行われたドジャースのホームゲームで始球式に登場した。[32][33] その後、Vの時間は再びBTSへと向かった。2026年1月、メンバーたちはWeverseに手紙を投稿してまずファンにカムバックを知らせ、BIGHIT MUSICは3月20日のリリースを公式発表した。[23]

2026年3月20日にリリースされたBTSの5枚目のフルアルバム『Arirang』は米ビルボード200で1位を獲得し、K-POPとして初めて2週連続1位を記録した。[24] 4月9日には高陽で「Arirang」ワールドツアーの幕を開けた。[25]

このアルバムでもVは「つくる人」だった。収録曲「Into the Sun」はVが中心となって作詞・作曲した曲で、トレーニングの帰り道に浮かんだメロディーから生まれた。[26] 2026年6月にフランス・エビアンで開かれたG7サミットでは、開催国フランスが制作した各国首脳の歓迎映像のうち、韓国の大統領を紹介する場面でこの曲が使われた。[26][27]

居昌でサックスを吹いていた少年は、友人について行ったオーディションで偶然道を見つけ、公開されないメンバーとして2年を待った。デビュー後はグループの低い声から始まり、曲を書き、映像を演出し、写真を撮る人になった。そして彼が作ったメロディーは、今や韓国を紹介する音楽になった。「自らつくる人」としてのVの物語は、今も続いている。

分野別まとめ

音楽(ソロ)

年 曲名 収録・形態 Vの関わり
2016 Stigma BTS『WINGS』 作詞・作曲
2017 4 O’CLOCK(with RM) デジタル公開 共同制作
2018 Singularity BTS『LOVE YOURSELF 轉 ‘Tear’』 歌唱
2019 風景(Scenery) SoundCloud公開 自作曲
2019 Winter Bear デジタル公開 自作曲、MV演出、ジャケット写真撮影
2020 Sweet Night 『梨泰院クラス』OST 作詞・作曲・プロデュース
2020 Inner Child BTS『MAP OF THE SOUL : 7』 歌唱
2021 Christmas Tree 『その年、私たちは』OST 歌唱
2023 Layover 初のソロアルバム 歌唱
2024 FRI(END)S デジタルシングル 歌唱
2026 Into the Sun BTS『Arirang』 作詞・作曲

出演作

年 作品 区分 役
2016〜2017 花郎(ファラン) KBS2ドラマ ハンソン役
2022 In the SOOP:フレンドケーション Disney+バラエティ 出演
2023 ソジンの家 tvNバラエティ 出演
2024 Love wins all(IU) ミュージックビデオ 出演

主な記録・受賞

年 内容
2018 花冠文化勲章(BTSメンバーとともに、文化勲章史上最年少)
2019 「風景」SoundCloud再生1億回突破
2021 「Christmas Tree」ビルボードHot 100入り(初のソロ)、デジタル・ソング・セールス1位
2023 『Layover』ビルボード200で2位、ハンテオチャートでK-POPソロ初週最高記録
2026 BTS『Arirang』ビルボード200で1位(K-POP初の2週連続)

出典

  1. 亜洲経済(韓国語)、BTSメンバー解剖:V(2018-10-30)
  2. テンアジア(韓国語)、V(2020-07-11)
  3. 亜洲経済(韓国語)、V『花郎』で初の演技挑戦(2016-12-19)
  4. W Korea(韓国語)、Vのソロ曲まとめ(2023-08-10)
  5. The Fact(韓国語)、BTS10周年 BTSとARMYだけの言葉(2023-06-21)
  6. クッキーニュース(韓国語)、V「風景」ラジオで放送(2019-03-01)
  7. IDN Times(インドネシア語)、「Winter Bear」ミュージックビデオ
  8. Elite Daily(英語)、「Winter Bear」ジャケット撮影
  9. 亜洲経済(英語版)、「Sweet Night」OST(2020-03-10)
  10. GQコリア(韓国語)、Vインタビュー(2021-12-21)
  11. 中央日報英語版(英語)、「Christmas Tree」Hot 100入り
  12. Bandwagon(英語)、「Christmas Tree」Hot 100(2022-01)
  13. Malay Mail(英語)、デジタル・ソング・セールス1位(2022-01-05)
  14. スポーツ京郷(韓国語)、Vソロアルバム『Layover』(2023-09-08)
  15. ニュースエン(韓国語)、V「発声練習から一からやり直し」(2023-09-08)
  16. VOGUE KOREA(韓国語)、もっと大きなVがやってくる(2023-08-02)
  17. 中央日報英語版(英語)、『Layover』ビルボード200で2位
  18. テンアジア(英語)、K-POPソロ初週最高記録(2023-09-15)
  19. Allure Korea(韓国語)、メンバー全員入隊(2023-12-11)
  20. スポーツ京郷(韓国語)(2024-07-03)
  21. ニューシス(韓国語)、春川で除隊(2025-06-10)
  22. スポーツ京郷(韓国語)、そろって除隊(2025-06-10)
  23. Cineplay(英語)、BTS 3月20日カムバック確定(2026-01-13)
  24. 中央日報英語版(英語)、『Arirang』2週連続1位
  25. Philstar/AFP(英語)、ワールドツアー開幕(2026-04-10)
  26. SBS Star(英語)、「Into the Sun」G7歓迎映像に(2026-06-18)
  27. 世界日報(韓国語)(2026-06-18)
  28. アジア経済(韓国語)、BTS 最年少で文化勲章(2018-10-24)
  29. ノーカットニュース(韓国語)(2018-10-24)
  30. テンアジア(韓国語)(2024-01-29)
  31. OSEN(韓国語)、IU・V「Love wins all」MV
  32. VOGUE KOREA(韓国語)、Vのドジャース始球式の瞬間(2025-08-26)
  33. ソウル新聞(韓国語)(2025-08-26)

訂正のご依頼

この記事に事実と異なる内容があれば、訂正依頼フォームからお知らせください。